1皮です。
岩佐さんと甲斐駒・赤石沢に行ってきました。
当初の計画は、登山大系に甲斐駒最長ルートと記載された大武川~赤石沢~奥壁左ルンゼを15~17日の3日間でトレースすること。だけど17日は雨予報ということで、2日間で左ルンゼまで登ってしまおうと、いつも通りの甘い見通しを立てて臨みました。赤石沢は何とか完登しましたが、残念ながらというか、当然ながらというか、左ルンゼは触らずに終わりました。
【15日】篠沢大滝キャンプ場先の林道3:30-4:30林道終点・入渓谷地点4:40-赤石沢出合-11:20大滝11:40-14:00Aフランケ下部岩小屋-15:00ビバーク地
【16日】ビバーク地5:305:50CS滝取り付き6:20-9:30フランス人のチムニー-14:30第一バンド15:00-20:00横手集落-21:00林道の駐車場
【15日】
お盆休みの家族連れで賑わうオートキャンプ場の真ん中を通り過ぎ、しばらく行った先の林道脇に駐車。大武川で堰堤工事が行われており、林道は路面がきれいで歩きやすい。シカの「キーン」という鳴き声を聞きながら篠沢との分かれ道を左へ行き、林道終点の工事現場まで。まだ薄暗いので、明るくなるのを待ちながらゆっくり準備する。土砂を詰めた堰堤工事用フレコンバッグの上を歩いて入渓。このところの猛暑のせいか、水はぬるい。
しばらく河原を行くと、最初の滝が現れる。すぐに右岸の巻き道へ。登山大系によると、95年前の1920年に初めて登山者が登ったとされる大武川。最近は入渓する人はあまりいないと思われるけど、踏み跡は明瞭だ。その後は、きれいな滑滝(上一条の滝?下一条の滝?)などが次々出てくるが、ほとんどを巻き道から越えていく。シャワーを浴びながら行く沢登りの楽しさはないが、きれいな釜や滝を巻き道から見るだけでも癒やされる。
滝の沢を右岸に分けた後、本流はやや蛇行するようになり、ヒョングリの滝や横手の滝と思われる滝など、美しい滝が続く。でも、どれがどの滝か全く分からない。左岸のカラ沢を越え、大きな滝を右岸から巻いていくと、正面に摩利支天の岩壁が見えた。しばらく行くと、左岸からしょぼい沢が合流。これが赤石沢らしい。赤石沢に入っても滝は続く。右岸左岸と巻いていき、連瀑帯を右岸から大きく巻いていくと、樹林の間から白っぽい河原が見えるようになってくる。その上には大滝が見えた。日差しが暑い。大滝正面の河原で大休止を取った。
大滝は水流の左側を登れるらしいが、今日は第一バンドまでの予定なので左岸の巻き道に向かう。右手の小尾根に乗り、岩壁にぶつかったら、やや不明瞭な踏み跡に導かれて右に左に越える。途中、土のルンゼを登ったり、古い残置ロープの方向へ岩を越えたりする。大滝の落ち口より遙かに高く上がると、踏み跡は左へトラバースするようになって、右手から来る八丈沢を下り気味に渡って、50分ほどで本流の河原に下りられた。その後、沢は傾斜を増し、クライミングに近くなる。その周辺には、4月に起きた遭難の犠牲者とものと思われる荷物が散乱していた。トイ状の滝をシャワーを浴びながら途中まで行き、巨岩の手前を右に巻き気味に越える。3段40mの滑滝を右岸から越える当たりから、巨大なAフランケが見えてくる。左岸の樹林帯に沿って巻き、Aフランケ下部のスラブへ。すでに午後2時。これから難しい滝が続く。このまま登り続けるかどうか迷ったけど、今日中に第一バンドまでは抜けられないと判断。本流近くの砂地にツエルトを張った。Aフランケ赤蜘蛛ルートでは2人パーティーが夕方まで奮闘していた。
【16日】夜は寒くてあまり寝られなかった。すぐ下の滝でずぶ濡れになり、濡れた衣服のまま寝たせいだ。4時起床。取り付きまですぐなのでゆっくり準備し、十分明るくなるころに出発。20分ほどで、でかい岩がいくつも溝に挟まったチョックストーン(CS)滝に着いた。
1p目40m(1皮)CSは一つ一つが巨大で、ハング帯のようだ。左壁は、水流で磨かれた花崗岩でつるつる。おまけに滝の途中まで水流があり、こけが付いている。カムが効くのが唯一の救いです。岩を乗り越す時にホールドがなく、マントリングを多用。「こえー」と叫び声を上げていく。カムとナッツでビレー点構築。
2p目15m(岩佐)本流が右に屈曲するところまで。Bフランケが目の前に見える。
この後はしばらく歩きが続くとみて、ロープをしまい、アプローチシューズに履き替える。でもすぐにロープなしでは越えられない巨岩が出てきて、2回ロープを出したりしまったりする。しばらく巨岩を乗り越えたり、砕石の上を歩いたりして、フランス人のチムニーの取り付きに付いた。チムニーの傾斜は緩そうで、そんなに難しくなさそう。ザックを背負ったまま登り出す。
1p目25m(1皮)オフィズスの1歩目が上がらない。左面はツルツル岩で、右はハング気味。これは無理! 荷揚げすることにして、カムにあぶみをかけてグラグラ動くチョックストーン(セカンドの岩佐さんが落としたらしい^^;)の上にはい上がる。一歩目から必死です。その後は、ずりずりやる典型的なワイドクラック登り。所々カムが効くので、プロテクションは安心です。上部は風化が激しくボロボロとれる花崗岩のかけらに気をつけながら登る。グレードは5・9ぐらいか。傾斜が緩く、CSにひっかかるため、荷揚げも一苦労。ロープ1本は1皮のザック荷揚げ用にして、セカンドの岩佐さんが自分のザックは背負って、1皮のザックを押しながら登ってくれた。
2p目10m(1皮)正面は傾斜のあるツルツルスラブ。右側はこけでヌルヌルのルンゼ。さてどっちから行くべきか。ルンゼにさびた残置ハーケンが一本だけあり、これしかプロテクションが取れない。ドロドロの岩のエッジにそっと乗り込み、その上は「ボロボロ岩がはげるなよ」と祈りながら、岩のしわにクリフハンガーを掛けてあぶみに乗る。右手がぎりぎり届く位置にあるヌルヌルチョックストーンの隙間にエイリアンをかませ一安心。あぶみをかけて、岩の上にはい上がる。どっと疲れた。
3p目25m(1皮)登山大系によると、最も困難なピッチとか。ここまででも十分困難です(^^;)。ザックなんて背負う気なし。ダブルクラックから、右手の急なルンゼに斜めに進み、洞穴、最後にハングが待っている。ハングの下にはハンドサイズの横クラックがあるのが見える。上から残置ひもが垂れ下がっているが、ぼろぼろで力をかけたらすぐに切れそうな位に劣化している。ハング下まで行ければと思いながら、ボロボロ岩の隙間に小さなカムをかけて、カムエイドで前進する。洞穴の下は最悪のボロボロヌルヌル岩。開いた溝にトライカムのオレンジ、下向きクラックにエイリアンの黄色などをはめてあぶみで前進。でもハング下の横クラックには1mぐらい手が届かない。ここで敗退?との思いがよぎるが、こんな軟弱プロテクションでは敗退もできない。しかたがない。岩のやや溝になった部分(ほとんど土?)を指でほじって結晶を落とし、長さ2センチ、幅5ミリ、奥行き1センチぐらいの穴を作り、最も小さいエイリアンの黒をはめテイスティングした上であぶみに乗り込む。結晶がガリッかける音にひやりとしたが、何とか落ちずに済む。ハング下の横クラックにハンドサイズのかけることができ、あぶみに乗ってハング上にはい上がった。奥壁が目の前に見えた。セカンドの岩佐さんは自分のザックを背負い、荷揚げの1皮のザックを押しながら登ってくれたm(_ _)m。
第一バンドで小休止。時間的にも、気力的にも左ルンゼをこれから登るのは無理なので、下山を決定。ながーい黒戸尾根を下りた。横手集落までは遠かったが、林道に止めた車はそこから5~6キロ先。足の痛みに耐えながら歩いて取りに行きました。
終わり