早戸です。
友人と剱岳小窓尾根に行ってきました。
夏ごろに今年は剱へ行こうと新婚ホヤホヤのF君を誘い、色々と迷走しつつも結局はシンプルな形で山行実現に至ることができました。
1/2 山行前日
新婚のF君は嫁さんの実家である飛騨で正月を過ごしており、当日早朝にそこまで迎えに行く段取り。まだ三が日も終わっていないのになんとも迷惑な話なのだが。
当日朝に着くように行ってもよかったのだが暇をもて余していた私は高山に住む千種の瀧根さんと呑むことに。
毎度お世話になってしまい申し訳ないのだが美味しいご飯とお酒をたらふくご馳走になり、ちゃっかりお宅にも泊めていただく。
1/3 山行初日
早朝F君と合流。前夜の酒が抜けきらぬ私はF君に運転を託す。富山までの道すがら何度脇に止めてもらったことか。登山口に着く前からゲッソリである。
そんなことをしていたからか伊折に着いたのは8時半。しかし外は雨。
傘を持ってくるのを忘れてしまったのでコンビニまで30分掛けて買いに戻る。
しかし伊折に戻ったころには雨は止んでいた。。
出発前から散々だが気を取り直して10時過ぎ(!)に出発。
伊折のゲートから8㎞の車道歩き。アスファルト歩きは足にくる。
12時過ぎに馬場島に到着。
入山の手続き時に山岳警備隊の方に話を聞くと、どうやらこの山域は我々2人だけらしい。
ということは我々だけのためにこの方々8人は仕事とはいえここに居なければいけないということなのだ。
なんだか非常に申し訳ない気もするが、貸切は気分がいい。
「貸し切りなので楽しんできて下さい」との言葉を受け、
ヤマタンを受け取り出発。
天候は雪に変わり出発1分でいきなりワカン装着。
白萩川沿いの雪は超湿雪。
鉄ゲタと化したワカンでラッセル。これは堪える。
事前に渡渉が数回あるとわかっていたが寡雪のためか今回渡渉した回数は少なくとも10回以上。
しかし持ち前の面倒くさがりを発揮し全てワカン装着のまま飛び石で押しきった。(F君は1ポチャ)
15時頃雷岩に到着。今日はここまで。
取り付きの小ルンゼ手前でテントを張った。水は沢から汲めたので今日は水作りしなくて済んだ。
1日目だけは豪勢に鶏鍋と1缶だけ持ってきたビールで入山祝いとした。
1/4 2日目
暗いうちに出発。雪崩に警戒しつつ急なルンゼの脇を上がる。ラッセルは膝から腿くらい。
明るくなる頃に支尾根に乗っかることができ、一安心。程なくして小窓尾根に合流するとチラホラと赤布があった。
尾根に上がってからも相変わらずラッセル。
一ヶ所尾根の下りで不安定な雪面があり、「ここ雪崩そうだな」と呟いた瞬間に足元からスッパリと表層雪崩が起き、ヒヤッとさせられた。
一気に標高を上げてバテたし、視界も余りないので13時過ぎ2160m付近で行動終了とし、イグルー作りで培ったブロックでガッチリ防風壁を作りテントを張った。この日はラッセル疲れで写真撮る余裕無し。ご飯はフリーズドライとレトルトカレー。
1/5 3日目
前夜の天気予報が悪く、この日は停滞かと思ってゆっくり起床。
ダラダラと朝飯を食べ、外の様子を伺っていると予報より風は弱い。視界もなんとか効くので行けるところまで進むことに。
10時過ぎに出発。
すぐに凍った斜面が現れ、せっかく装着したワカンをアイゼンに変える。
ここからはところどころアイゼンが必要な部分があったためアイゼンのままラッセル。
ニードルは懸垂したが50m1本では下まで届かず結局登り返す。
よく見たら稜線どおしでそのまま歩けた。
ドームを越え目の前に岩峰(マッチ箱だと思っていたが、ピラミッドというらしい)が見えたコルで14:30行動終了。
雪庇を削り半雪洞でテントを張る。
夕食は牛丼と棒ラーメン。あす以降の天候は良いと見て食糧を減らしにかかった。
1/6 4日目
この日は予報通りの快晴 。気持も晴れやかにラッセル開始。
目の前のピラミッド(このときはマッチ箱だと思っていた)の登りで残置FIXが見える急雪壁を確保して登りそのあと岩峰を右に巻いた。
マッチ箱の登りでもワンポイントロープを出した。その後も急雪壁 の万歳ラッセル。
小窓ノ頭を巻くため一気に下る。雪崩を警戒し大きく回り込んだ。
小窓の頭を上がれば11月に偵察した場所に出た。あとは小窓ノ王を巻いて下った。
三ノ窓到着。天気も良かったのであわよくば長次郎のコルまでと思っていたが
稜線に出てからも続くラッセルで予想以上に時間がかかってしまった。
15:00行動終了。今夜も雪庇を削って半雪洞にテント張った。
今晩は黒カレーに親子丼。明日下ってしまうつもりだが念のため1食分だけ残しスープやら食べまくる。
1/7 5日目
2時起床。今日中に少なくとも早月小屋まで行きたいとの思いで早起き。
4時に出発し池ノ谷ガリーを上がる。幸いクラストして歩きやすかった。
稜線に出てからは概ねクラストした雪面となったがところどころ深いラッセルの部分もあった。
いよいよ頂上が近付いてきた。夜明けももうすぐ。
夜明け前に山頂にたどり着き、感動的なフィナーレとなった。
F君とがっしり握手をし、下山に取りかかる。
早月尾根の下りは状態が良くロープ無しで下ることができた。
早月小屋に着きほっと一息、関係各位に連絡を入れた。
ここからもとレースは無いのでまたワカンを履き、最後の最後までラッセルでの下山となった。
馬場島にてヤマタンを返却。
茶菓子を御馳走になり、久々の糖分が体に沁みた。
そこからは8㎞のアスファルト歩きをビールを飲みたい一心で歩いた。
*
昨年ほどでは無いとはいえ今年も雪が少ない。
そんな中での剱はもしかしたらあんまり行く価値は無いんじゃないか、なんて思ってみたりもしたが
全くそんなこともなく例年より少ないとはいえ5日間しっかりラッセルをし、ルートファインディングを楽しみ充実した山行となりました。
【今山行で導入をしたもの、試みたもの】
オマケでこんな紹介を。
・イグルー
元々今回はテントレスで剱に行くというテーマで計画を進めていた。準備山行でも何度か試したが経験不足もあり実用段階には至らなかった。
しかし、有用なのは確かで技術の引き出しに入れておくといい気がする。あと雪に対する造詣も深まるのでいいと思う。
・ジェットボイル
実際に使ったこともあるし、今や全く珍しくもなんともないが今回購入し持参した。
やはりガスの消費量は格段に少ない。あと鍋とバーナーが合体出来るのも使い勝手が良い。
吊るせるとより良いのだが、今回はテント内に紐がなく吊るすことが出来なかった。
ネックなのは火加減が調節できない(高級タイプはできるらしい)、鍋が小さい(金で解決できる)ことか。
・クロスオーバードーム
ヘリテイジの超軽量シェルター。ポール込で驚異の700グラム。人気過ぎて在庫がないらしい。
私も購入を検討したが在庫がないため千種の至宝・原田氏にお願いし、買ってまだ一度も使ってない新品を借りた。
買って返すつもりである。たぶん。
・自作エナジージェル
その値段の高さゆえ、私は長期山行の時のみ高級なエナジージェル(一個240円)を持参するのだが、今回は自作することにした。
これなら一個50円以下!貧乏人の財布に優しい行動食の出来上がり。
作り方はネットで調べればわかるので割愛します。
フリスクボトルはパワージェルの一個500円のものを二個購入。
もっと使い勝手の良さそうな(トレランのひとが使いそうなやつ)ものは2000円以上したので却下。
ゴミも出ないし、これは良い。
オマケおしまい。
最後になりましたが、
新婚ホヤホヤなのに付き合ってくれたF君、
日本山岳会東海支部青年部のみなさん、
富山県警山岳警備隊のみなさん、
千種アルパインクラブのみなさん、
本当にありがとうございました。