ミヤザキです。
雪上講習会に21日土曜日だけしか参加できなかったため、前日20日から八ヶ岳に入って阿弥陀岳南稜を登ってきました。
【20日】
舟山十字路(1620m)6:20-南稜取り付き7:00-立場山(2370m)9:40-あおなぎ10:30-P1取り付き12:30-P3取り付き13:20-阿弥陀岳山頂14:50-赤岳鉱泉16:00
【21日】
中岳沢分岐15:00-阿弥陀岳山頂16:30-17:10CMCテント-19:10舟山十字路
今年の八ヶ岳は雪が多い。
そう聞いていたはずなのに、すっかり忘れていた。
舟山十字路からの歩き出し、トレースはあるもののなだらかに雪に覆われている。今日は先行者は期待できない。
南稜取り付きまではくるぶしラッセル。嫌な予感。尾根上への急登はひざ上ラッセル。グエー。
尾根上の樹林帯は時折足跡が出てくるが、トレースと言えるほど固まってもないし、つながってもいない。
予想以上にスピードが上がらんなーとうんざりするが、天気は無風快晴。このコンディションで登れなかったら、今後どこも一人じゃ登れんぞ!と自分にハッパをかけて、無心に進む。
ほんとにバリエーションルート?って思うくらい赤テープが巻かれているので、迷うことはない。
立場山は展望なし。そこから平坦な樹林帯を行くと、あおなぎ手前で急に視界が開けて阿弥陀岳西面が姿を見せた。ワーイ。
逆を見れば、権現岳。こっちもかっこいいカール地形の山頂。登攀意欲が高まるぜー。
あおなぎ(木のないところ)を過ぎるとまた樹林帯の急登。ここは時折胸ラッセルになって、存分に雪と戯れることができた。ワッショーイ。
赤テープも少なくなって、より楽そうなルートを見極める訓練になる。選んだルートが正解かどうかはわからないけど、とにかくワシワシ登る。
森林限界を超えると、赤岳から南へ延びる八ヶ岳の主稜線がドーン。天狗尾根もかっこいい。
右に赤岳、左に阿弥陀岳、中に中岳というわかりやすい構図を正面に見ながら、雪稜を行く。
雪庇もできていて、けっこうちゃんとした雪稜。視界が悪いといやらしいかも。
P1、P2は適当に超えて、核心と言われるP3まで来た。
記録によるとここは「岩峰基部を左から大きく巻き、ルンゼを登る」、ということだが、雪が多いためか、どこまでが岩峰基部なのか判然としない。とりあえず中程のトラバースできそうな岩の隙間を進んでみる。
すると目の前に登れそうな浅い草付きのルンゼが出てきた。
ここかなー?と登りはじめてみる。
けっこう悪いな、まあでももうちょっと登れば傾斜も緩むだろ…と楽観的に登り続けてしまった。
雪に埋まったホールドを掘り出し、草付きにアックス指して、ハイステップからの手に足!…とかって絶対ここ正規ルートと違うやろ!ヒー!
気づいてしまったものの、降りるほうが危ないので覚悟を決めて登る。Ⅴ級くらいあった。落ちなかったから良かったものの、フリーソロで行くところじゃない。これは重大ミス。
ルンゼを終えると、左手に長ーいフィックスロープが張られた大きなルンゼが見えた。こっちかー。
ロープに向かってトラバースするか悩んだが、サラサラ雪の雪壁もいやらしいので、稜線まで岩雪ミックス帯をもうひと登り。しかし稜線を進むと東面に切れ落ちた大きな岩が行く手を塞いでいる。
これは滑ると数百メートル真っ逆さまなので、乗り越えるのはやめて雪壁をトラバースし、フィックスロープ上部に出た。ようやく正規ルートに合流。いろいろとすり減らした。
P3でヘトヘトになったが、目の前には山頂。タイミング良く雲が取れた。
しかしそこからが遠い。ラッセル、デリケートなトラバース、学習院大の遭難者への黙祷、最後の雪壁をヘロヘロとこなして、阿弥陀岳山頂に出たときには、もうガスっていた。
9月の錫杖岳以来、久々に踏めたピークはうれしい。しかも全行程一人ラッセルだったので、充実度はこれまでで一番かも。思わず一人でガッツポーズ。
約1時間で赤岳鉱泉まで下山。翌日の雪上講習会に備え、ステーキを食べつつ進撃の巨人14,15巻を読んだ。エレーン。
講習会は曽我さん講師の2班。文三郎尾根と中岳尾根の間の谷で、さらさらの雪上での支点作り、制動確保、滑り台を壊さないシリセード、雪洞作りからのビフォーアフターの匠ごっこなどをみっちりやった。
15時終了。みんなと別れて中岳沢を登り、16時半に2日連続の阿弥陀岳山頂。この日は見事な眺望だった。
しかしのんびりしていると日が暮れるので、夕陽と競争しながら御小屋尾根を下山。
北西稜の合流地点から御小屋尾根と中央稜の分岐(摩利支天)まではトレースがなかったので、下山もラッセルを覚悟した。
しかし中央稜を登って山頂を踏まずに御小屋尾根を降りたパーティーが先にいるようだ。そこから先はトレースがある。ヤッタゼー。
雪が風で飛ばされた岩稜帯はやや慎重に、雪が出てきてからは駆け下りて、樹林帯に入って少ししたところで、とあるテントと出くわした。
宴会中だった中の方々が声をかけてくれ、「これを食べていきなさい」と生ハムとクリームチーズ、さらに紅茶と甘酒まで振る舞ってもらった。なんてウマイ。
聞けば御小屋尾根を登ってきた松本のCMCの方々で、重鎮とおぼしきMさんはかつて南岳で千種のメンバーが起こした遭難のときにお世話になった方らしい。山の世界は狭い。
この補給のおかげで、あとは舟山十字路までノンストップで下山。目標の19時は過ぎたが、夜の森の中を一人黙々と歩いていると、なんだか不思議と楽しくなる。
冬の単独行は、やっぱりいい。