2009.04.25
鹿島槍ヶ岳 北壁敗退
メンバー波多野 他3名
天狗尾根の取付きまでのアプローチで心配していた渡渉は2回あった。靴とスパッツ一体型の高級靴を履いている田中・高瀬さんは、なんの躊躇も無く対岸に渡っていく。残された我々は右往左往して適当なところを探すが、さっさと靴を脱いで渡った方が早そうである。
億劫なので意地でも飛び石で渡ろうとしたら、案の定失敗して前のめりにコケてしまった。
荒沢の出合い手前からは、右岸の雪壁をヘツリ気味にトラバースしていく。天狗尾根の第一・二クロワールよりも悪く感じられた。
天狗尾根に乗っかれば単調な登りが続くだけであるが、運動喘息が出ている僕は息も絶え絶えである。
第二クロワール付近で下山してくる人に話をする。荒沢北壁を狙う予定だったらしいが、敗退理由がとても曖昧で分からなかった。(数日後の情報ではザックを落としたとも聞いている)
快晴無風の好条件なのに、早々に撤退してくることを不思議に思った。田中さんは「あれが生き残る秘訣だよ」と言っていた。
天狗の鼻に到着すると見事な北壁が眺められる。
スピード命のルンゼルート・明日の降水確率は90%・喘息が出ている・をキーワードに、北壁を眺めながら明日の行動をシュミレーションして、完登の可能性を見出そうとした。
しかし、どう考えてもパートナーに迷惑を掛けるこになろうと思われた。
ザイルを組むことになる神保君に、明日の登攀辞退を告げると、「どうしちゃったんですか?剣で燃え尽きちゃったんですか?」との言葉が心に染みた・・・。
そして僕が皆に話す前に、田中さんが「明日はテントキーパーするから皆で登って」と登攀辞退を告げた。
続けて僕が登攀辞退を告げ様ものなら、完全に白けてしまうので皆には言わずに再び完登の可能性を模索した。
テントの中ではいつもの様に、豪快な宴会と各自の食料をなべにブチ込む豪快な夕食を楽しんだ。
平成メンバーと山生活では初めての神保君は、とても新鮮に感じたようであった。
翌日3時に起きて天候の様子を見ると、今にも泣き出しそうな空模様である。全員一致で登攀中止が決まった。
来年も同じメンバーで、戻って来ることを約束して天狗の鼻を後にしたのでした。
雨に打たれ、全身濡れながら帰りました